『2017年おしゃれオフィス20選』取材の第9弾は、株式会社FiNCです。ヘルスケアの専門家と人工知能の融合で、パーソナルコーチとして最適なソリューションを提案するスマホアプリで注目を集めています。社員の声を取り入れて、ユニークな作りになったオフィスに関してお話を伺ってきました。
本記事の内容
一人ひとりの人生の成功をサポートする
●株式会社FiNC 代表取締役副社長 CAO兼CWO 乗松文夫 様(以下乗松))
弊社は一言で言いますと、スマホのアプリを用いて皆様の健康をサポートする会社です。一人ひとりの「一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートする」ということを経営理念として掲げています。具体的に言うと、弊社のアプリを最初に起動すると、「どんなことでお困りですか」「今朝の朝ごはんは何ですか」「1日どれくらい歩いてますか」「最近お悩みありませんか」など、健康関連をはじめとした様々な質問をいたします。その回答を裏側で人工知能などを用いて、個人個人の属性に応じて、「あなたにはこんな食事が良いですね」「こんな運動が必要ですよ」といった、パーソナライズされた生活改善方法を提供しています。日々人工知能が様々な問いかけをすることでさらにデータの精度が上がり、パーソナルコーチとして、より最適な提案ができるわけです。
シェアオフィスの小さな一間から、2012年4月にスタート
●永田
自分の行動を可視化するのは難しいので、非常に有り難いサービスですね。ではオフィスの遍歴をお教え下さい。創業は2012年4月ですよね?
●乗松
はい、2012年4月に、浜松町に小さなベンチャーが集まっているスペースのほんの一間を借りてスタートしました。そこで縁があって、「オフィスを使っていいよ」とご紹介頂き永田町へ。そこも非常に小さく、役職関係なく様々な人間がぎゅうぎゅう詰めで働いていました。そこが手狭になり、次は銀座へ。銀座も何度か増床したり広げたりしたのですがまた狭くなったので、2016年の3月にこちらに移転しました。現在は有楽町の目の前なので、「ベンチャーでこの立地は背伸びし過ぎなんじゃないか」という意見もありました。銀座や八重洲、渋谷や六本木など様々な候補がありましたが、この場所は三菱地所さんが「街づくり」として健康増進に力を入れている場所であり、「世界中から人が集まりやすい場所」であったので、東京駅の隣である有楽町に決定しました。
●永田
様々な候補地の中から「有楽町の駅前」という立地を選んでみて、いかがでしたか?
●乗松
これが想像以上に良かったです。立地としては東京駅の隣、しかも駅からすぐですから、地方から来られる方や外国からの方もとても便が良く来やすいんです。さらに私たちは、自分のオフィスを「従業員の健康を増進するウェルネスオフィス」にするために様々なしかけをしているので、スタートアップ時は、普通だったらお話を持ちかけても話も聞いてもらえないのに、「従業員が健康になるための様々な仕組みがあるオフィスがあるので、人事部の方々も一度ご覧になってみませんか?」なんてお話をすると、「じゃあ話を聞きがてら見に行ってみるかな」ってどんどん来てくださるんです。これは立地が良いからというのも大きいですよね。さらに便利さを最大限に活用して、セミナーやミーティングなど様々なことを開催して「人が集まる場」にしています。例えば「エンジニアになりたい」という学生向けのセミナーだったり、海外から専門家が来日する時にちょっとした勉強会を開いたり、オフィス見学や説明会を開催したり。とにかく、立地の良さをいかして社内外で色々な使い方をしています。
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●永田
もともと御社代表の溝口さんが、オフィスが狭い時から定期的に勉強会を開催されていたんですよね?
●乗松
そうなんです。「FiNC大学」と呼んでいますが、今でも活発にやっていますね。月に一回、普段はなかなかお話が聞けないような、有識者の方たちが応援団として来てくださっています。そして従業員の前で、ビジネスの話からスポーツの話、ここに行ってきてあんなことがあった、など様々な体験談を気軽にお話しくださって。夜だと懇親会もあり、講演者と直接お話することができますし、朝の短い時間で開催する「FiNC朝大学」もあります。そういった色々な研修やセミナーも、講師を招いて開催しています。
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●永田
色々な勉強会が多いのですね。もともと「人が集まる場所」というか空気感はすでに移転前からあって、さらにそれを加速させるっていう空間作りを意識されているのですね。
●乗松
そうですね。勉強会は、社員だけではなく社外向けにも開催していて、様々な企業のエンジニアの方々を集めた意見交換会などもやっています。最近では「健康経営」は政治でも取り上げられる大きなテーマとなっています。先日経済産業省が、優良な健康経営を実施している会社を『ホワイト500』と命名し、発表しました。弊社も選ばれて表彰式に行ってきたのですが、翌日の日経デジタルヘルスの記事には表題の中に「FiNCなど235社認定」と、数ある認定企業の中から弊社の名前をご紹介いただけまして。もっと有名な会社もたくさんある中そういった書き方をして頂いて、まだまだこれからだとは思うのですが、健康経営・ウェルネス経営の啓蒙企業として期待いただいている気がして、本当に感動したんです。今私が事務局長になって、「ウェルネス経営協議会」という会を運営しているのですが、こちらは「健康に興味がある」あるいは「従業員を健康にしたい」というコンセプトに賛同してくれる会社なら誰でも参加出来るという、非常にオープンな健康経営を追求する組織です。設立1年ちょっとですが、現在は上場企業含めた100社近くが加入くださっています。そういった会も定期的に開催しています。
社員の意見を取り入れ、新オフィスには入るとすぐにキッチンが
●永田
今回のオフィスづくりでこだわったのはどんな部分でしょうか?
●乗松
弊社CEOの溝口が非常にこだわり、結構先頭きって色々とやっていましたね。みんなが働くオフィスなので、プロジェクトチームを作って、全社アンケートをとったり、アイデアを事前にたくさん集めました。設計会社に希望を出して、さらにプロから色々なアイデアをもらったら、すごくいいものができるんじゃないかと。工夫を重ねることで当初予定していたよりも費用も抑えて、ウェルネスオフィスを完成することができました。
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●永田
実際に社員の声を取り入れた中で、ユニークだなと思う点はありますか。乗松さんから見られた視点の中で。
●乗松
入ってすぐ、いきなりキッチンがあるところでしょうか。社内には管理栄養士もたくさんおりますし、やはり「健康」は弊社にとって大きなテーマですから、きちんと栄養を考えた上で人々にヘルシーで美味しいものを提供したい、と考えています。玄関にキッチンがあって、食堂に社員が集って食べているオフィスってあんまりないと思うんですよね。栄養士が料理をしているところも見れますし、懇親会を開くとすぐそこで食べられるものを作ってくれるんです。そういう空間を作ったことのは、すごく発想として面白いなと思っています。あと、様々な部署のコミュニケーションが取りにくくなるので、いつでも気楽にコミュニケーションが取れるようにワンフロアにして、小さな会議室をたくさん作りました。ちょっとカフェテリア風のところから、ラフな椅子が置いてあるところなどいろいろと座れるスペースはありますが、必ずディスプレイを最低2画面置いてあります。そこでパッと打ち合わせをして、必要なら片方でプレゼンをしながら、もう片方では議事録を作っていくという。そうやって、コミュニケーションを取りやすく、そして効率的に、という工夫を取り入れています。
メタボはダメ?健康を重視した採用法
●永田
採用に関してはどのような点に注目していますか?
●乗松
健康をテーマにしている会社なのでタバコを吸う人は入社できません。タバコを吸わないことが入社の内定の条件ですね。また、BMIが25以上だと肥満なんですけど、30を超す人は基本的にはお断りしています。本当にいい人財だったら、「入社後何ヶ月以内に減らす」という合意のもと入社いただいて、社内の管理栄養士やプロのトレーナーが痩せるための様々なサポートを行います。私が入社した二年半前は20名前後だった社員が、現在ではインターン等を含めて200名を超えています。今までは新卒より圧倒的に中途採用で、ここまでは様々な分野の専門家・プロフェッショナルの方を中心に人を引っ張ってきました。反面、様々な価値観を持った方が入社するので、下手をすると組織が空中分解してしまう恐れがあります。なので、採用の際には『ビジョンの共感』がとても大切だと今は考えています。「これからのFiNCの文化を作る」という意味ではフレッシュな人たちも非常に必要なので、新卒もバランス良く採っていこうと思っています。
FiNC SPIRITの共有
●永田
先ほど「ビジョンの共有」というお話がありましたが、それは企業が拡大して行く中で非常に大きなテーマだと思います。御社は具体的に、どのようなことをされていますか?
●乗松
中途入社が多いとどうしてもそれまでのバックグラウンドが違うので、皆が共有すべき『FiNC SPIRIT』とはどんなもので、具体的にどういう形で具現化するか、ということを明文化して、共有制度なども設けています。また、月に一回、FiNC SPIRITを体現していた人をアワードとして表彰しています。アワードは各部門長が選んで、「今月は彼はこういう働きをしたからぜひ選びたい」と議論し合って、最後は自分の部門以外のメンバーへの投票します。トップから3位までを表彰しますが、10項目あるFiNC SPIRITのうち、どれを体現していたかを明確にしています。基準を設けたことで、全てのメンバーが毎月改めてFiNC SPIRITを認識できるし、実践しようという気持ちにもなれるのではないでしょうか。
蓄積された膨大な情報を元に、徹底的にパーソナライズされたサービスを
●永田
では最後に、御社の今後のビジョンをお聞かせ下さい。
●乗松
FiNCのビジョンは、「一生に一度のかけがえのない人生の成功をサポートする」を掲げています。そしてまさに今、全社のビジョンをもとに、各部門でもビジョン・ミッションを作り直しているところです。各部門で、プロフェッショナルとして、そしてFiNCの担う役割として、何を目指し達成していくかを考えています。FiNCが考えていることの一つは「徹底的にパーソナライズされたソリューションの提案」です。FiNCのアプリでは、チャットなどを通して日々お客様とやりとりをしているので、どんどん悩みやライフログといった情報が蓄積されていきます。通常のEコマースでは、住所や年齢、名前、性別、クレジットカード情報程度しか取れませんが、うちでは例えば「日々何を食べている」「どんなことで悩んでる」など細かな情報に加え、「どういう生活がしたいのか」「健康になるために、日々どんなことをしているのか」も分かりますし、人によっては検診データも入っています。自然に膨大なデータが大量にたまっていくので、それをビックデータとして活用して応用し、人工知能や専門家によってお客様に完全にカスタマイズしたソリューションを提供していきたいと思っています。社会のインフラとして、電気ガス水道が欠かせないように、一人ひとりに寄り添うサービスを提供することで、社会の健康インフラを作っていきたいと思っています。
●永田
究極にパーソナライズされた様々な提案、楽しみにしております。本日はありがとうございました。
ー乗松様 貴重なお話を誠にありがとうございましたー
取材協力:株式会社FiNC 代表取締役副社長 CAO兼CWO 乗松文夫 様