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VRは「情報」ではなく、「体験」を届けるツール|旅好きを魅了した360度VRコンテンツ制作の裏側

 

「若者が旅する文化を創る」
 
株式会社TABIPPO様はこの言葉をミッションに掲げ、旅を通じて世界を良くしようと様々な事業を行っている会社です。TABIPPO様のメンバーはもちろん旅をこよなく愛する人ばかりで、若者が旅をする土壌を作るために数多くの企画を発信しています。
 
先日ハワイ州観光局様がリリースされた若年層向けプロジェクト「VEBOSS」のプロジェクトの一環として、ハワイを360度見回すことのできるコンテンツの撮影、編集をTABIPPO様が担当し、公開しております。この動画はTABIPPO様のイベントの一つである「BackpackFESTA2017」にて、イベント参加者全員がハコスコを使ってハワイのリアルな雰囲気を体験するコンテンツに活用されました。
 
今回、なぜVRコンテンツをハワイの観光プロモーションに利用しようとおもったのか?また制作の段階においてどういった部分にこだわりを持って撮影したかなどを、株式会社TABIPPOの小泉 翔様(下画像右)と、コンテンツを制作された株式会社アドワールの阿部 剛平様(下画像左)にお聞きしました。

 

 


 

一過性ではなく中長期的なプロモーション活動を

 
LIFE STYLE古城(以下古城):もともとハワイ州観光局様と一緒にお仕事されていたそうですが、今回のハワイ360度VR動画の撮影に関しては、どういった経緯で取り組むことになったのでしょうか?
 
TABIPPO小泉様(以下小泉):ハワイ州観光局は以前から、より多くの若者がハワイに足を運んでくれるには、どういうプロモーションがいいのか、というお話しをさせて頂いておりました。リゾートやショッピング、結婚式などのイベントを目的にハワイに行く方が多く、僕たちのようなバックパック一つ背負って世界中を旅する若者がハワイに行きたくなるには…という議論です。そういった若い人をメインターゲットにして、一過性ではなく中長期的にハワイのプロモーションをしていこうという考えで一緒に取り組み始めたのが360度VR映像や弊社の主催するイベントでのハワイプロモーションです。
 

 
古城:ハワイ州観光局様のリリースされた「VEBOSS」という取り組みは、御社が掲げている「若者が旅する文化を創る」というミッションにマッチしていたんですね。「VEBOSS」とは、VR映像、イベント(Event)、書籍(Book)、オンライン(Online)、SNS、アンケート(Survey)、の頭文字をとったデジタルとアナログのmixアプローチであるとのことですが、この「書籍」の部分ってどういうものでしょうか?
 
小泉:TABIPPOでは旅を広める一事業として書籍の出版を行っています。もともと「365日 絶景の旅」というシリーズを出版していまして、1年分365か所、この日はここに行くべきっていう場所が掲載された写真集になります。
 
(「365日 世界一周の旅」)
 
今までは「世界一周」と「日本一周」のものは出していたので、第3弾を出すことになった時に「ハワイにしよう!」と。一カ所で365日分の魅力を持っている場所って、まさにハワイがぴったりだよね、と。それにハワイ州観光局様の方から情報や素材の提供など、非常にうまく連携取れながらできそうだったので、ぜひ両社でタッグを組んでやろう、ということになりました。
 

必要なのはコンテンツをアウトプットできる場所

 
古城:今回、長期的なスパンで360度VR動画プロモーションを行うとなった背景や課題感ってどんなものがありますか?
 
小泉:背景としては、このビルの9階にTABIPPOがあって、8階にVOOKが入ってきたんです。僕はもともと阿部くんとお付き合いがあって、「旅行とVRは相性が良いよね」なんて話をしていたんですね。そこでハワイ州観光局様とのお話があり、ハワイだったらこの「旅行×VR」の企画としてぴったりだと思い、360度VR動画のプロモーションを提案したというのが始まりですね。
 

 
株式会社アドワール阿部様(以下阿部):僕は、彼ら(TABIPPO)の強みは若者に対してリーチができることだと考えていて、また若者にはテクノロジーが必須だとも考えているんですね。なのでハワイのお話があった際に、これはいい機会だなと。そこでテクノロジーを使ったプロモーションはハワイ州観光局としても面白いんじゃないかと伝えたところ、渡りに船といった感じで、ちょうど若者に向けたコンテンツを欲していたようでした。
 
古城:今回制作された360度VR動画を、昨年末のTABIPPOさんのイベントで学生さんに向けて発表していましたよね。ヘッドマウントディスプレイで見てもらっていたかと思うんですが、コンテンツ制作の最初からああいった形で公開することを考えていたんですか?
 
小泉:そうですね、それはもちろんありました。僕の考えなんですが、VRコンテンツを撮られている観光局や旅行会社は、それを大きく発信する場所を持たないことが多いんですよね。ターゲットとしてリーチしたい人にアプローチする手段を持っていないのかなと感じます。その点僕たちの強みは、ターゲットになる人たちをオンラインだけじゃなくオフラインでも集めることができることなので、アウトプットの場所としてイベントを選びました。
 
古城:どんな形で見てもらったんですか?
 
小泉:「ハコスコ」を使って見てもらいました。昨年末の「BackpackFESTA2017」というイベントで公開したんですが、400人全員に一斉にハワイの360度VR動画を体験してもらって、すごく評判が良かったです。僕たちのイベントに来てくれる若いユーザーと360度VR動画での新しいプロモーションというのはすごくマッチしているんだなと感じました。
 
(「Backpack FESTA」にて実際に360度VR動画を体験している様子)

 

ハワイ「オアフ島」を撮影した2つのVR動画

 
古城:私もこのVR動画のコンテンツを拝見したんですが、ハワイの風景を楽しめる「オアフ島編」と、人が旅行しているところを見て楽しむ「男旅編」のこの二つは、どう言った意図で撮影されたものなんですか?
 
【男旅編】
↓↓画像の上でクリック&ドラッグすると、360°の景色が楽しめます↓↓

 
【オアフ島編】
↓↓画像の上でクリック&ドラッグすると、360°の景色が楽しめます↓↓

 
阿部:実際にイベントで見てもらったVR動画は「男旅編」なんですが、ここに関してはイベントにあったコンテンツを作るということを意識していました。「BackpackFESTA2017」に来る子達にとってTABIPPOのメンバーはシンボルのような存在ですので、そのメンバーと一緒に旅行をしている雰囲気が味わえるということが大事でした。そういった意図で、「男旅編」は動画内にTABIPPOのメンバーが出てきて、まるで一緒に旅をしているかのように感じられるコンテンツにしてあります。
 
小泉:もう1つのコンテンツは、「男旅編」がどちらかといえば若者やイベント向けであるのに対して、そうでない場面で使うためのものとして作りました。ただ綺麗な風景が見たいという人にも楽しんでいただけるようにですね。
 

「情報」ではなく「体験」を届けるためのVR

 

 
古城:360度VR動画での撮影に際して、なにか苦労したところやこだわった部分などありますか?
 
阿部:「男旅編」などで気にしていたのは、動画内に登場するTABIPPOのメンバーといかに一緒に旅をしている感じが出るかですね。そこは技術を駆使しながらこだわりました。
 
小泉:あと大変だったことといえば、通常の撮影と違って360度カメラを伸ばしたりして撮影するので、そもそも撮影の許可が降りないことがありましたね。他にもヘッドマウントディスプレイを装着してみてもらうことを想定していたので、撮影の際にあんまり動きすぎると体験の時に酔ってしまいますよね。そこは気をつけて注意を払いながら撮影しました。
 
古城:VR動画を作ってプロモーションするにあたって、リアリティのある景色を見せてしまうことによる不安はありませんでしたか?先に見せてしまうことで、実際に旅行をする人が減ってしまうんじゃないかと。
 
小泉:そうですね…僕たちのイベントに来てくれる子達は旅へのモチベーションが高くて、むしろVR動画を見ることが旅への推進力になってるような感じでしたね。一歩踏み出しやすくなるためのコンテンツとして捉えているので、そこに不安は感じていませんでしたね。
 

 
古城:実際にイベントに参加された人の声ってどんな感じでしたか?
 
阿部:評判はすごく良かったですよ!すでにハワイに行ったことのある人もその時のことを思い出しながら喜んでくれていて。「ここの道を通ったことがある」、なんて言いながら見てくれて。
 
古城:それはいいですね!すでに行ったことがある人にとってもアーカイブ的な意味があるんですね。
 
阿部:そうですね。僕はVRは「情報」ではなく「体験」を届けるツールだと思っているんですね。旅にとって大事なのはどれくらい衝撃を与えられるかだと思っているんですが、VRならかつて衝撃を受けて感動した出来事をまた思い返して、また行こうと思ってもらえる。そういった使い方のできるツールだと思っています。
 
ただパソコンで見るだけでは「情報」でしかない360度VR動画を、こうして発信する場所を整えてあげることで「体験」に昇華することで、コンテンツの持っている力を完全に引き出すことができるのだと思います。
 

いつかは世界のヴァーチャル・ツアーを

 

 
古城:360度VR動画に関して今後の展望をお聞かせください。
 
阿部:TABIPPOのコンセプトは「世界一周」なので、それこそ世界中のヴァーチャル・ツアーが体験できるようになれば面白いと思いますね。
 
小泉:それはぜひやりたいですね。今回みたいな見せ方に加えて、イベントの際にブースを立ててそこで世界一周ヴァーチャル・ツアーを味わってもらうといったこともやってみたいです。実は僕たちは「BackpackFESTA2017」だけではなく、一年に一度「旅祭」というイベントも行っているんです。日本中から7,000人以上の若者が参加するイベントで、今年も9月に開催されます。「旅祭2017」は音楽・ダンス・フード・トークが楽しめる他に例を見ない旅イベントです。この刺激的な1日を是非楽しんでいただきたいですね。
 
 
ー小泉様・阿部様 貴重なお話を誠にありがとうございましたー
 

旅祭2017
2017.9.3.SUN
開場9:30 / 開演10:30 / 終演20:00
会場:幕張海浜公園 Gブロック/野外特設会場
主催:旅祭実行員会
(株式会社A-Works、株式会社TABIPPO)
お問い合わせ: info@tabimatsuri.com

 
 

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