VRの普及に伴って、近年多くのVR業界のニュースを見かけるようになりました。そのようなニュースの中で「Magic Leap」という名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。「Magic Leap」はVR業界で大注目の企業ですが、代表的な製品はなく、活動に関する情報もあまり発表されていません。
注目されているにも関わらず謎に包まれた「Magic Leap」。そんな彼らの活動を時系列で追いながら、「Magic Leap」とは一体どんな企業なのかをわかりやすくご紹介します。
本記事の内容
「Magic Leap」とは
「Magic Leap」は、2010年に設立されたアメリカの企業です。拡張現実や複合現実といった「MR(ミックスド・リアリティ)」に対応したデバイスを開発しています。
※MR:仮想世界に現実世界の情報を取り込み、両方の世界を融合させた世界を作る技術。融合世界。
徹底した秘密主義を貫き、情報をほとんど公開していないにも関わらず、クラウドファンディングによって5億4200万ドルという多額の資金調達をしています。
そうそうたるメンバー
「Magic Leap」が注目されている理由の一つが、実力のある社員を抱えていることです。まずは彼らのプロフィールをご紹介します。
・Richard Taylor・・・WETA共同創業者であり、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビットの冒険」などを手がけたVFXのプロ集団・WETAウォークショップのクリエイティブ・ディレクター。
・Graeme Devine・・・「7th Guest」「11th Hour」といったベストセラーゲームを制作したベテランのゲームクリエーター。
・Brian Wallace・・・「Google」などの国際的なブランドのマーケティングを主導していた。最近では「Samsung」のマーケティングキャンペーン「Next Big Thing」で知られる。
(画像引用元:リチャード・テイラー(クリエーター)、Graeme Devine 、AdvertisingAge )
これだけの名前が並ぶと、一体どんな企業なのかと興味を惹かれますね。それと同時に、今後どのような技術を生み出していくのかと期待が高まります。
「Magic Leap」の目的
「Magic Leap」の目指すMRデバイスは、最終的には眼鏡のような形状になると言われています。このデバイスが完成すれば、ユーザーは現実と仮想が違和感を感じさせないほどに融合しあう世界を体験することができるでしょう。
会社の基本指針として「見る人の脳に足跡を残さない」ことを掲げています。他の3D資格技術には、使用した際に吐き気や頭痛などの症状が伴うという指摘がありますが、「Magic Leap」では、こういた悪影響を取り除き安全性に配慮した製品を開発しているそうです。
「Magic Leap」のCEOであるロニー・アボヴィッツは、同社の技術をモバイルコンピューティングや「Oculus」スタイルのVR(ヴァーチャルリアリティ)、拡張現実と区別しています。「Magic Leap」は先の3つを超えた技術を開発し、人々が通信や買い物、学習、共有、遊びに利用している技術を根本的に変えると声明で述べています。
これまでの歩み
ここからは、「Magic Leap」が行ってきた活動とそれに対する反響をまとめます。「Magic Leap」が公開した動画は、後ほどまとめてご紹介します。
2010年
アボヴィッツ氏が自らのアイディアを漫画化、映画化すべく「Magic Leap Studio」設立。
2011年
5月
企業の法人化に伴い「Magic Leap」に改名。今後はMRの開発に専念すると決定。
7月
コミックコンでARアプリ「Hour Blue」をリリース。
2014年
10月
ビジネスを拡大のための資金調達で、合計5億4,200万ドルを調達したと発表。
投資家は「Google, Inc」「クアルコム」「KPCB」「アンドリーセン・ホロウィッツ」「KKR」「バルカン・キャピタル」「レジェンダリー・エンターテイメント」など
2015年
2月
・アボヴィッツ氏がソーシャルニュースサイト「Reddit」の「Ask Me Anything(AMA:なにか質問ある?)」コーナーに登場。その中で「Magic Leap」の製品をスクリーンやスマートフォンのようなものではないと言及。
・芸能や医療など様々な分野のUIデザインを使用し特許申請を行う。
3月
「Just another day in the office at Magic Leap」というタイトルの動画を公開。【動画①】
4月
TEDカンファレンスへの出演を見合わせ。その場で発表予定だったデモビデオを公開。【動画②】(写真)
6月
MIT Technology Reviewの開催するEmTech Digitalカンファレンスのステージに登壇し、自社のプラットフォームに拡張現実のコンテンツを製作するゲーム開発者や映画製作者、その他のクリエイターをどのように呼び込みを実現するか発表。
10月
新たな動画を公開。【動画③】
12月
「Magic Leap」の取締役会にGoogleのCEOスンダー・ピチャイ氏が参画。
2016年
2月
中国の小売り大手アリババ・グループが主導する新たな資金調達ラウンドで7億9,350万ドルを獲得したと発表。これまでにも、グーグルやクアルコム、ワーナー・ブラザースなどから出資を受け、最新の資金調達ラウンド後、マジックリープの評価額は推定で37億ドルになる。
4月
新たな動画を公開。【動画④】
6月
・Magic Leap,Inc.による新たな特許申請。(VR HMD)
・「Walt Disbey」傘下の映画制作会社「Lucasfil」ならびに「ILMxLab」との提携を発表
・新たな動画を公開。【動画⑤】
7月
中国で開催されたテクニカルカンファレンスにて、MRデバイス「Magic Leap」の技術デモが行われる。ARショッピングやボイスコントロールなど新たな機能が公開。
12月
システムの小規模な生産テストを行っていると発表。
「Magic Leap」によって公開された動画
【動画①】
このゲームはWetaワークショップが作ったレイガンのレプリカを使ったもので、同社と共同で開発されている次世代FPSゲームだと思われます。
【動画②】(写真)
(画像引用元:出演を見合わせたTEDで Magic Leap が披露する予定だったデモビデオ)
こちらは画像でのご紹介となります。動画では、Gmailを使ってゲームを楽しむ方法など、テクノロジーがどのように使われているかが紹介されています。
【動画③】
この動画の最下部には、「2015年10月14日に、マジック・リープの技術により直接撮影された。動画を制作するにあたって、特殊効果を用いたり合成したりはしていない」という注意書きがあります。
【動画④】
「Magic Leap」が開発中のARヘッドセットによるものです。映像の質の高が高く、スマートフォンアプリとの連携や幅広い応用の可能性を感じさせられます。
【動画⑤】
この動画は、映画「スター・ウォーズ」シリーズの製作を手掛けるルーカス・フィルムの下にある新技術研究チームILMxLabとの戦略的な提携によって作られたものです。
現在の「Magic Leap」
時間軸に沿ってまとめることで、「Magic Leap」がどんな企業なのか見えてきたことと思います。次に、そんな「Magic Leap」が現在どのような動きを見せているかご紹介します。
2月
・「Magic Leap」のデモ機がスクープされる。スクープされた事実に加え、デモ機がとても大きく波紋を呼ぶ。
・スイスを拠点とするDacudaの3D部門を買収 。これが初のヨーロッパ進出となる。
・元社員が「CEOの性差別と誇大宣伝」を提訴。
以上が今年の大きな動きです。
「Magic Leap」の企業価値は45億ドルに上るとされています。「Magic Leap」はご紹介したとおり、あまり情報を公開せず商品を発売することもしていません。それでもこれだけの支援を受けられるのは、「Magic Leap」の作ろうとする世界が夢に満ち、非常に魅力的だからではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか。「Magic Leap」のCEOアボヴィッツ氏は、次のように述べています。
「身の回りの世界がすべて、あなたのデスクトップになる。そんな未来がやってくる」
また、2017年後半には1000〜2000ドル(約11〜22万円)でARヘッドセットを売り出すと言っています。アボヴィッツ氏の言うような未来がくるのを心待ちにしつつ、今後も最新情報をご紹介していきます。