株式会社DMM.com様は1999年に設立され、オンラインゲーム、動画配信、電子書籍、ネット通販などを主な事業として運営している企業です。様々な動画コンテンツの配信を行っており、2016年11月にはVRゴーグルを装着して見ることのできるVRコンテンツの配信も開始しました。
今回、同社が運営する動画プラットフォーム「DMM.com」について、なぜVRコンテンツの配信を開始したのか、そして今後のVRに関する展望などを株式会社DMM.com 動画配信事業部営業マネージャー 木村知憲様、動画配信事業部 太田春輝様、動画配信事業部プロデューサー兼プロジェクトマネージャー 島野大輔様にお聞きしました。
本記事の内容
2014年からVR市場へ参入の準備をしていた
LIFE STYLE古城(以下古城):
今回は御社が行っているVR対応コンテンツの配信についてお話を伺えればと思います。まずVRコンテンツの配信を開始した背景をお伺いしてよろしいでしょうか。
DMM.com木村様(以下木村):
もともと2014年にはVRのβ版がサイトの中にありました。サービスというよりも、今後DMMもVRのコンテンツを作っていきますという意味合いを込めたティザーサイトのようなものですね。そこからVRに関しては2年くらい寝かせていて、ようやく2016年がVR元年ということでハードウェア側が盛り上がってきたので、いよいよ我々としてもハードに対応したコンテンツを、運営しているプラットフォーム上で販売していくべきだと感じたのが販売の背景です。
古城:
2014年から既にVR対応コンテンツの用意はしていたんですね。ただ市場がまだ熟成しておらず、VRが普及もしていなかったため見送ったと。確かに2014年当時はVRゴーグルもほとんどなかったですね。
木村:
2014年というとオキュラスが販売している「Oculus Rift DK2」という開発機が、いよいよ日本でも正式に買えるようになった年でした。実際に触れてみると面白いとは思いましたが、果たしてコンテンツが売れるか、どれくらい普及してくれるかというところが未知だったんです。そこで最初のスタンスとしては、新しいものをDMMとして取り組むという形で当時DMM.VR[β]として少数ですがVR動画を公開しましたが、まだ市場と呼べるものがなかったので、そのまましばらくその状態が続きました。
古城:
それでは2016年にさまざまなVRゴーグルが発売されたのに合わせて、コンテンツも正式に増やしていったという流れでしょうか?
木村:
はい、我々自体はコンテンツを制作している立場にないので、他社様が作られたものを調達することで増やしました。ただ正直に言うと、まだVRは市場が小さかったので、あまりコンテンツ自体も多くなかったんですね。リリースした当初も100タイトルくらいをなんとかかき集めて、昨年11月にオープンしました。そこから徐々に盛り上がってきて、コンテンツを制作する企業自体の数も増えてきて。ようやく数が安定的にどんどん追加されるような状態になってきているところです。
VRコンテンツの配信ハードルは決して高くない
古城:
御社のプラットフォームで販売しているコンテンツは、クリエイターが制作したコンテンツを配信されていると思いますが、実際そのコンテンツの選定はどのようにされていらっしゃいますか?
木村:
具体的に中身までをチェックした選定はしていません。ただ、個人の方が趣味で行われているようなものなど、商用制作をしていないものは除いています。ただ基本的な方針としては、国内で販売しているものは全て取り扱おうというポリシーのもとコンテンツを集めています。まず配信できるものは全て集めていくというようなポリシーで進めています。
古城:
販売価格感というのはその製作者側がある程度決められるということですか?
木村:
そうですね。基準はありますが、製作者様にお任せする場合もあります。
古城:
それではVRコンテンツをビジネスとして制作している人で、例えば今お取引のない企業様でも配信することは可能でしょうか?
木村:
はい。VRコンテンツの配信プラットフォームと言うと、他社さんでいくつか我々と同じような形式での販売ができる売り場があります。ただ、どこも配信しようとすると、なかなか審査が厳しいです。チェックもそうですし、見え方であるとか。我々は弊社の作っているアプリに仕様上対応さえしていれば、あまり中のチェックというのはしていないので、厳密に審査らしい審査というものはないですね。そういった点から弊社のプラットフォームは、コンテンツを作られている製作者さんからすると、比較的ハードルが低くご提供いただけて、販売ができるというのがメリットとしてあると思いますね。
古城:
それは良いですね。クリエイターの課題として、作ったコンテンツを一回イベント等で使ったあとに、二次利用するための場所がないというのがあると思います。御社のプラットフォームはそういったところでも、クオリティが担保されていれば配信できる可能性があるということですね。
木村:
まさにその通りです。イベント用に作られたコンテンツに対して「オンラインで販売しませんか?」というご提案をさせていただいたりもします。その辺りは作り手さんとのニーズが合えばぜひ扱いたいと思います。
予想よりも高かったユーザーのVRへの興味関心
古城:
VR対応コンテンツを配信することで、普段動画のプラットフォームをご利用されているユーザーと違うターゲット層へ興味を持ってもらうことは想定されていましたか?
木村:
具体的なターゲット想定はありませんでしたが、VRを購入される方は、最新の情報に興味のある方や、ハードウェアに興味があるというユーザーだと思うので、想定していたのはそういった方々でした。あえて挙げるとすると男性ですね。そのターゲットは今いらっしゃる他のユーザー層ともマッチするので。
古城:
それでは実際に来ている反響の中で、意外な反響はありましたか?もともとのターゲットとして想定している方はもちろん反応があると思うのですが、それ以外の反応などはあったんでしょうか?
木村:
単純に感じたところとしては、購入される方が意外と多いなと思いました。VR対応コンテンツを見るためにはVRゴーグルが必要であったりするので、もう少し市場の規模が小さいかなと思っていまして、まだまだVRと言ってもあまり買われる方はいらっしゃらないと思っていました。どちらかと言えば売れ行きは徐々に伸びていくかなと思っていたんですが、リリースした直後でも購入される方が多かったので、そこは予想とは反しましたね。
古城:
確かに有料のコンテンツが購入されているということは、VRゴーグルを持ってらっしゃるユーザーが増えているということですね。
木村:
VRゴーグルを持っていなかったとしても、そのために購入するくらい興味があって合わせて買ったのかなと思います。アプリを作ってコンテンツを用意しても、VRゴーグルがないと見れませんよね。なので安くて良いVRゴーグルを仕入れて、一緒に訴求したりしました。実際リリースした直後というのは、1000個単位でゴーグルも売れたりしました。
古城:
ちなみにVRコンテンツだけで見たときの売れ行きについてお聞きできますか?
木村:
公表させていただいている数字になると、ちょっと古い数字なんですけれども、2017年5月に100万本販売を達成しました。月商で一億円くらいですね。
VRコンテンツの二次利用的な提供場所としてのプラットフォーム
古城:
何か他に思わぬターゲットや利用者の声というのはありますか?
DMM.com島野様(以下島野):
我々もユーザーからの声が、直接弊社のサポートセンターのほうに来ているわけではないんですけれども。どちらかというとそういうポジティブな反応というのはSNS上で自発的に書かれる方が多いです。PSVRでサービスが対応したときは結構な話題になっていましたね。
木村:
あとは一般のお客様ではないですが、クリエイター様やVRゴーグルのベンダー様からの反響も多かったですさらには、我々が販売するコンテンツを卸して欲しいとか、予想以上にそういう反響がありました。
古城:
たしかに、VRコンテンツを作って、提供できる場所ってまだすごく少ないかなと思います。しかもゲームではなく動画だと、さらに提供する場がないですね。作ったコンテンツの排出先としてプラットフォームがあると、クリエイター側としては一回作って終わりじゃなくなるので、可能性が広がることになりますね。
配信するVRコンテンツの内容は自由
古城:
御社のプラットフォームにはいわゆるストーリー性があるしっかりとした360度VR動画はもちろんあると思いますが、例えば観光スポットの動画といった簡易的なコンテンツもあるのでしょうか?
DMM.com太田(以下太田):
そうですね。歴史上のお城を探検していくようなコンテンツだったりとか、中には自然の中で森林浴を楽しめる様なコンテンツもあったりします。あとは結構ユーザーさんの反応がいいのが、星空とか風景とか、ヒーリングの音楽に合わせて、例えば南の島とかに自分がいるみたいな感覚を体験できるようなコンテンツは非常に反応が良かったりしますね。特に尺の制限も定めていないので自由に作っていただいています。
木村:
VRとして推すべきなのは没入感であるとか、現実的な体験がリアルでできるかだと思っています。VRだからこそ力を発揮されるクリエイターさんもいらっしゃると聞いています。普通の撮り方とまた違うとよくお聞きするので、そういう方にこそ制作・配信してもらいたいですね。
VRを一時だけで終わらせないために
古城:
最後に今後のお話を伺いたいのですが、目標値として、サービスのリリースから一年間でコンテンツを何本にしたいという数値はありますか?
木村:
リリースから半年ほど経った今で1800本以上のVR対応コンテンツがあります。ですので、単純計算でも今の倍くらいの数にはできるかなという気がしています。
古城:
今後どういったコンテンツを増やしていきたいや、力を入れていきたい分野などありますか?
木村:
定期的に話題性のあるコンテンツや、ユーザーにヒットする作品というのを集めていかないと、どうしてもVRが一時の衝撃だけで終わってしまうと思います。販売店としては話題性があったり、ヒットする作品であったり、そういう目玉になる商品の情報をキャッチすることで配信していきたいという思いはあります。
ー木村様・太田様・島野様 貴重なお話を誠にありがとうございましたー
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