
ヘルスケアをVRが変える!?医者と患者の視点から見たVR体験
VRはビジネスの各種業界の常識を変え、今まで解決することが難しかった問題の打開、そして新しい可能性の提示が可能なテクノロジーです。今回は「ヘルスケア」の世界に焦点を合わせて、医者と患者の両者の視点からVRがどんな風に使われているのかを取り上げていきます。
ヘルスケアにおけるVRの意義
ヘルスケアの業界はどの業界よりも早く最新の機器や技術、新しいテクノロジーを導入し、そして病気に対してアプローチし続けています。その場にいるかのように周りを見回すことのできるVRは、難易度の高い手術や、珍しい事例などに対する教育や訓練の効果が期待できます。また実際の手術においてもVRを活用し、難解な術式に臨むことができます。
もちろん患者側でも、VRを用いることで発揮される効果は期待されています。脳を錯覚させて、リアルだと認識することで、精神的な病状の緩和や手術等の恐怖心を和らげることに一役買っています。
ここからはそういった、ヘルスケアで実際にVRを活用している例を紹介します。
医者が活用するVR
ヘルスケアでのVR活用法で、医者がVRを用いる際の事例を紹介します。今回は医者が勉強・訓練するために用いる事例と、実務の際に用いる事例を紹介します。
学習の際にVRを用いる
医療技術を学ぶ際や、特殊な手術の流れの共有のためにVRが用いられることが増えています。先述したように、VRはその場にいるかのような臨場感を持てるため、貴重な体験を重ねる上で非常に有効です。
↓↓画像の上でクリック&ドラッグすると、360°の景色が楽しめます↓↓
※スマートフォンでご覧になる場合は、YouTubeアプリで再生すると360度動画がお楽しみいただけます
上の動画のように実際の手術中の様子をVRで見ることができるようにし、誰しもが共有できるようにしている事例があります。2016年春にシャフィ・アーメッド氏が、手術の様子をリアルタイムで世界各国の13,000人の医師に共有したことを先駆けに、手術の様子を空間ごと共有する事例が増えてきています。
またこちらの動画のように手を動かしながら、VRで手術の体験をすることができます。ミスの許されない現場を、本当にその場にいて執刀しているかのような感覚で訓練することができます。
実務の際にVRを用いる
日本の医師もVRを積極的に用いています。杉本真樹氏は日本において医療にVRを持ち込んだ第一人者として知られており、VRを使って手術のサポートをすることに成功しました。以下の動画をご覧ください。
このように手術室でVRゴーグルの「Oculus Rift」を装着し、解剖図をチェックします。これは実際に解剖した時の図ではなく、VR用に作られたものです。VRゴーグルを通して解剖図を立体的に見て、どこにどの器官があり、どこを切れば良いかなども色付きでわかる様になっています。
また精密な捜査の必要な医療用ロボットで手術を行う際にも、VR解剖図があることで手術のナビゲートが容易になり、スムーズに術式を行うことができると杉本医師は語ります。肉眼では確認できない部分をVRで確認し、そこをロボットの精密な動きでチェックすることができます。
些細なミスも許されない手術現場において、テクノロジーが大きくサポートしてくれる様になっています。
患者が活用するVR
次に、ヘルスケアでのVR活用法で、患者がVRを用いる際の事例を紹介します。精神的な病気や病状の緩和、そして恐怖心を和らげるといった効果を持った活用法を紹介します。
幻肢痛のケア
(画像参考元:バーチャルリアリティを用いた幻肢痛の新しい治療)
こちらは事故や病気などで手足を失った人が陥ることのある「幻肢痛」に対するケアにVRを用いた方法です。幻肢痛とはないはずの手足がかゆくなったり、強く痛んだりする症状があると言われています。
幻肢痛のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、脳からの指令に対して事実とのギャップが生まれることによる痛みであると言われています。この治療法として生まれたVRは、患者の「健全な方の手足(健肢)」を撮影・左右反転して投影することで、失ったはずの手足を動かすという疑似体験を味わうというものです。こうすることで脳内のギャップがなくなり、痛みが和らぐという研究結果が報告されています。
恐怖心の緩和
注射が苦手な人は大人でも多くいます。注射した時の痛みや、それに伴う恐怖が、どうしても苦手意識として現れてしまうのでしょう。このVR活用法は、その痛みや恐怖を軽減させるための糸口になるものかもしれません。
カリフォルニア州にあるサンスム診療所は、子供が予防接種を受ける時にVRを用いて注射の恐怖を軽減しようと試みました。この取り組みは2016年の9月から11月にかけて実施され、VRゴーグルを装着し、海の景色を見せることで落ち着きを生みました。244人の子どものうち112人がVRゴーグルを装着しました。対象の子どもの両親は、子どもが48%痛みが軽減し、52%が恐怖が軽減されたと報告しました。
この事例はVRを使いまったく違う風景に没入することで、痛みや恐怖を感じなくできるということが判明しました。
まとめ
以上のように、VRはひとつの業界においても画一的な使い方ではなく、非常に幅広い使い道のあるテクノロジーであることがわかります。医師がVRを活用し、人間の限界の部分を超えたサポートができるようになればもっと容易に病気へ対策が打てるはずですし、患者がVRを用いることで精神的な問題の症状や病状を解決できるのならば世の中に助けられる人は大勢いることでしょう。
いずれVRがより普及し、進歩した時にはおそらくそんな世界も空想ではなくなっているのです。
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