
【STORY × Psychic VR Lab】「今までの常識を壊すことで文化が生まれる」
株式会社Psychic VR Labは2007年4月に設立された、研究開発型のVRサービス提供企業です。ファッションブランドがオンラインで世界観を消費者に伝えたり、商品本来が持っている魅力を伝えたりできる、VR制作・配信プラットフォーム「STYLY(スタイリー)」を開発しており、2017年8月にパブリックβ版をリリースしました。
今回はこのSTYLYに関して、株式会社Psychic VR Lab 代表取締役 山口征浩 様にお話を伺ってきました。
ーーまずSTYLYとはどのようなサービスかお伺いできますか?
Psychic VR Lab 山口様(以下山口):
STYLYは、クラウド型のVR空間を制作・配信するためのサービスです。Webブラウザ上にSTYLYで好きなVR空間を制作し、その中に入り込むことができます。Webブラウザを用いてクラウド上で動作する仕組みになっていて、STYLY用の3Dスキャナーで服を着たマネキンを撮影すると20分後には3次元で復元されて、VR空間上で使うことができるようになります。
他にもブラウザ上でYouTubeを検索して、そのまま動画をVR空間上に差し込むことができたり、特殊な演出を挿入することができたりします。これらの処理はクラウド上で行われているので、各種ヘッドマウントディスプレイにそのまま配信できる仕組みなんですね。つまりクラウド上で施した演出がリアルタイムで反映されていくんです。将来的にはここから商品購入をできるように機能を拡張していく予定です。
アパレルのブランドの世界観を表現するためにVRを使っていたんですが、VR上だと「Tilt Brush(VRのペイントツール)」を使ったり、ファイルをインポートしたりすることができます。これを通して、今映像を作っている人も、CGを作っている人も、今までクリエイティブなことをしてきた人たちがVR空間で創作活動をすることの敷居をぐっと下げることが可能になって、才能をさらに開花させるということが一番大きいと思っています。
ファッションデザイナー・空間デザイナー・造形作家・音楽家等の人たちに対して、VRで自分たちの作品を表現する世界観・文化を提供していきたいです。そのために文化創造を通したアプローチを行っていて、学校と一緒に新しいVR表現を教えるコースを作ったりしています。新しい表現方法としてSTYLYを使うことによって、ファッションの世界観にVRならではの表現を広げることが可能になります。そういう人たちを作っていくことを含めて新しい文化を作るための活動もしています。
ーーSTYLYを今後どう発展させていきたいと思っていますか?
山口:
そもそも自分がファッションを表現の場として選択したのは、VRがゲームやビジネスだけでなく、人の生活の中で使われるコンテンツになっていくといいと思ったからです。VR空間の中で服を買ったり、仕事をしたり、ネットサーフィンをしたりといった生活をしてほしい。自分の好きな世界の中で生きていってほしいと思っているので、そういう空間としてSTYLYを使っていけたら良いですね。
もともと私は、VRでしかできないことをやっていく人が増えて、新しい文化ができるのを後押ししたいという気持ちが強いんです。ファッションの世界は作ったものに対して妥協が全くなく、非常にシビアです。だからこそ、そこで認められたプラットフォームはこだわりを持ったクリエイティブなプロが納得するクオリティになる。プロが美しいといえる土台を作って、VRに触れる人が増えていったらいいなと思います。
ーーVRがいずれ新しい文化を生むということですね。
山口:
そうですね。インターネットが生まれたことによって、小さな会社が大きく、今まで無名だった個人の知名度があがったように、VRによって、無名の人が大きなブランドになる可能性が生まれます。その文化を一緒になって作っていければ、それが一番嬉しいですね。
ーーこの先STYLYが広がるきっかけには何があると思いますか?
山口:
何かが広まるきっかけには、若い世代の人たちが目的ベースで使うようになることが大きいですよね。日常的に若い人たちが使うようになることが大事なので、クールなものを提供することが必要だと思っています。
ーーそうしますと、若い人たちにSTYLYを積極的に使って欲しいということでしょうか?
山口:
そうですね、文化を作るという意味でも、新しい才能を持った若い人たちに触れてみて欲しいです。今も実際にファッション系の専門学校で勉強会などを行っており、今までVRに携わったことはないという人にも気軽に触れてほしいなと思います。STYLYを使って若いクリエイターたちが可能性を開花させるようなことが起きてくると本当に嬉しいですね。プラットフォームを作った我々でも想定しなかったような表現がそこから生まれるはずで、それに触発されてさらに輪が広がっていくと嬉しい。
ーー実際にSTYLYを使ってみた人からの反響はどうですか?
山口:
実際に「作る」経験を味わった人は、通常のVR体験よりももっと感動してくれていると思います。というのも、2016年から今にかけてはVRを初めて体験しましたという人が増えた年だと思っているのですが、次は「作る」経験と感動を増やしていきたい。自分たちで表現したいものを表現した感動は忘れられないものがあります。今制作をしている人が参加するのが理想で、その後のフェーズで一般の人たちがクリエイターになってほしいという感じですね。
ーー現時点で、VR市場はどういう状況だと想定していますか?
山口:
現状、ヘッドマウントディスプレイは完全には普及しておらず、それに伴ってコンテンツの量が足りないということが課題になっていると思います。VRでしか表現できない世界を楽しむことは、正直まだまだ一般化していないと思っているので、現実で行こうと思っても行けない場所にVRで行くという行動を後押ししていきたいなと思っています。
ーー今後VRはどういった変化をしていくと思いますか?
山口:
新しいプラットフォームが生まれる瞬間には常識・ライフスタイルが変わるものだと思っています。今まではヘッドマウントディスプレイがどう小さくなって日常に溶け込むかが議論されてきましたが、今後はVRに合わせて生活を変えていくのではないでしょうか。自分は、新しい才能を持った人たちとともに世の中を変えていきたいと考えています。
ーーなるほど、今後は生活の中にもVRが使われていくんじゃないかということですね。
山口:
はい。現状では日本はまだまだヘッドマウントディスプレイが普及していないなど、海外に比べるとVRの市場が熟成されていないと感じます。ですが日本人は、茶室・庭園など空間を大事にする特殊な感覚を持っていて、限られた空間をどう表現するのかという感性を持っています。世界のシェアの中で、日本人しかできないような発想を、日本から発信するとしていけるはずです。VRではVRでしかできないようなことをやっているように、その国のカルチャー、価値観を尖らせたものが入り乱れると面白いと思いますね。
ーー最後に今後の展望をお聞かせください。
VRを多くのクリエイターデザイナーに使ってもらって、VR上での表現の自由、クリエイティビティを味わってほしいなと思います。その表現の可能性を感じ取ってもらいたいです。VRは触っていないけれどもクリエイティブなことをやってきた人たちが、世界観を表現したい人たちをVR空間に引き込んで、世界に伝えるというところまで僕たちのプラットフォームでやっていきたい。
VRって今までコンテンツ作るのとても大変だったんです。今でこそ360カメラは安くなりましたが、そのあとそれを使って3D空間上に配置したりするのは大変だった。それをクラウド上で提供することによって、簡単にし、幅を広げることができればいいなと思っています。
ー山口様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー
株式会社Psychic VR Lab
〒160-0022 東京都新宿区新宿 1-34-2
MORIAURA 2F
Tel.03-3527-9965
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