
【STORY × AVATTA】「25年間のカメラマンのスキルをVRの事業として活かせた」
株式会社AVATTAはスキャニングを専門としており、最大120台以上のカメラを用いることでハイクオリティ3Dデータスキャニングを行うことのできるスタジオです。「カタチあるものを、より鮮明に、より正確に残すこと。理想のビジュアルをトータルに作り出す事。」という思いを持って、最新の技術を駆使してクライアントの理想のビジュアルを3Dで再現・保存しています。今回は長年フォトグラファーとして活躍され続け、AVATTA CEOの桐島ローランド様にお話を伺いました。
ーー御社の事業内容についてご紹介いただけますか?
AVATTA桐島ローランド様(以下桐島):
単純に言うと、AVATTAは3Dスキャニング専門のスタジオです。うちの会社の場合3Dデータを作る会社なので、一番得意でベースの部分になるのが人のスキャニング(アバター制作)なんですけど、一応小さなものから建物まで、地形とかも要望があればスキャンできます。つまり3Dスキャン全般に特化したサービス業です。
ーー近年VRのサービスも行われているとお聞きしましたが、どのようなことをされているのでしょうか?
桐島:
VRっていろんな種類があるんですが、単純にVR、例えばTHETAみたいなカメラで360度動画を撮影し、そしてその中に入る体験。それだと単純に360度見渡せるだけで、その中の空間を移動するとかそういうのはできない。そういったVRからHTC Viveみたいなルームスケールの物に関しては3Dの空間の中を移動できたり、インタラクションができるっていう、その2種類に分かれてきて。そうなるとそこに出てくるキャラクターとか、あと例えばテーブルとか椅子とかもそうですけど、それの3Dデータが必要になってくるんですよ。ハイクオリティな3Dデータの需要がこれからすごい増えてくると思うので、それに向けたアセットの制作みたいなことを強みにしています。今は3Dのアセット制作に一番力を入れてるって感じですね。
ーー今後のVR市場に沿った領域に注力されているんですね。
桐島:
そうですね。これからVRは伸びてくるんじゃないかなと思って僕は期待してるんですけど、うちのお客さんは主にテレビCMとか、テレビ局とか映画とか、そういうプロフェッショナルなクライアントが多いのでやはりまだみんな様子見ってところがあって。まだVRの事例ってうちで作ったぐらいで、あと何社かVRの案件のお手伝いしたぐらいで、そんなにすごくまだVRがバッと花咲いた感じではないですね。
VRって実際8K映像なので、8Kの60フレームをたたき出すっていったらかなりのスペックの本格的なパソコンが必要になるので、今のスマホ主義の市場とはある意味逆行しています。やはりスマホレベルのことができるとなると一気に普及しますからね。そういう意味ではハイエンドのVRはまだまだ課題があるんじゃないかなと。
ただこれからもちろんすごく伸びてくるし、まだまだ本当にこれから面白いことはいろいろ起きてくるんじゃないかなと思います。なのでうちもそこに向けて、今ターゲットを徐々に絞り込んできてるという感じですね。
ーーありがとうございます。御社の中のメンバーは4名とお伺いしましたが、役割の構成はどのようになっていますか?
桐島:
データが作れる人としてジェネラリストが1人います。スキャンって、かなり大掛かりな装置が必要なのと、やっぱり3Dデータ自体の扱いが結構大変なんですよ。要するにフォトショップで写真をいじるっていうような感覚とは全く違うので。マウスで寄ったり、ズームしたり引いたりとか、あとスクロールしたりとかそのレベルですけど、3次元のデータってやっぱり回転させたり引いたり、真上、真下、真横とか、いろんな角度で物が見れるっていう。3次元のデータのビューイングだけでも結構難しいので、一般の人はまずそこに慣れるのにすごく時間がかかるし、すごく難しいんですよ。
スキャンしておしまいだったらいいんですが、それをちゃんとリアルに動かすためにはかなりの労力とコストと時間がかかっちゃうんですよね。ただ3、4年前、3Dスキャニングができる前、アバターの制作を手で1からやる場合は下手したら1年以上かかってたんですよ。だからそれが1週間とか1カ月でできちゃうっていう意味では、ある意味ディスラプションモデルですよね、3Dスキャニング自体が。
ただ、僕はこれも時間が解決してくれると思っています。あと5年ぐらい経ったらAIが勝手に修正してくれてデータも勝手に動けるようになってっていうのは、きっと可能になるんじゃないかなと思います。
だから3Dデータが人の生活の中に自然に根付いていくことは確実だと思っています。今みなさんまだ慣れていないし、ハードが追い付いてないというところがありますが、4、5年経ったらもう普通にファッション、例えば今だったら写真で見てるもの、2Dで見てるものを全部3Dで見るということは当たり前のことに多分なっていますね。僕の読みでは、5年から10年後にはもう確実にそうなってると思います。
ーーなるほど。未来の先まで見られてるという印象を受けるんですが、逆にそもそもこの事業を始められたきっかけはなんなのでしょうか?
桐島:
僕はフィルム時代からやってるので25年ぐらいカメラマンをやっているんですけど。まさに僕たちの時代というのはデジタルにすごく影響された時代です。だってもともとネットがない時代、プリントの時代から仕事をやっていて、そしたらインターネットがやってきて。ただ最初インターネットって出てきたときに、もちろんウェブでコンテンツとかはありましたけど、当時はただ写真見るのも大変だったから、やはりきれいな写真をネットで見せるっていう概念がなかったし。
だから最初のコンテンツはほとんどテキストベースだったじゃないですか、それもPCでしか見れなかったし。そこにスマホがやってきて、iPhoneがやってきて、なおかつ回線が3Gから4Gになってみたいな。やはりこの10年ですごいいろんなことが変わって。特に僕たちの業種っていうのはフィルムからデジタルになって。あとフォトショップみたいなものがある意味当たり前になったりするっていうのがビジネスの在り方を大きく変えましたよね。
ちょうどそのときVRの業界では、Oculus Rift DK1とかあそこら辺が出てて、やっぱりこっちになるんだなと思った。自分の今までやってた体験が生かせるテクノロジーって何かないかなと思って調べたら、フォトグラメトリーっていう写真を使ったスキャニングに出会って。じゃあこれ自分ができるのかなと、一生懸命勉強しました。取りあえず自分で40台カメラ借りて、それでデータが作れたらこの事業をやってみようと。ただ40台カメラ借りてデータが作れなかったらやめようと思ったんです。そうしたらデータが作れちゃったんですよ。やっぱり最初だから感動ですよ。写真が3Dデータになってくわけですから。
ーー自分のスキルを最新のテクノロジーで活かせるんじゃないかと思って挑戦したことが最初だったんですね。
桐島:
これは事業にできると思って、一気に会社を立ち上げました。ちょうど3年前の8月です。最初は僕ともう1人の2人でやっていました。もちろんすごいトライアンドエラーで、基本的には自作しているので。本当、幸い全部うまくいって。そして去年からやっと業績が良くなって。
最初はやっぱり苦労しました。というのはやはりそういうサービスがまだ日本になかったので。B to Bの3Dスキャニングサービスっていうのは、弊社が初めてだと思うんですよ。だから当たり前ですけど客がそんなにいないし。ただ僕も逆に広告とかそっちの世界はカメラマンのときからのつながりがあったので、そういうところで営業したら広告は意外と響いて。昔はCGってすごい高いもので時間がすごくかかるという意味で皆さん遠慮がちだったのが、今は広告も少しずつCGを使うようになってきています。うちはすごくコストを安くしてるというのと、納期が早いという理由で、結構がんがんCMに使ってもらえるようになって。大体、月に2本とかのペースでテレビCMとかやってますね。
ーーちなみにどういうものに使われてるんですか。
桐島:
最近で言うとウィルキンソンの松田優作が出てるやつとか、あとはRAIZINっていうエナジードリンクですね。スクランブル交差点を何十人もこうやって交差していくものです。あとはミュージックビデオや、ユニクロのCMでパフュームが出てるやつなどのキャラクター制作を請け負ってます。
ーーありがとうございます、面白いですね。では業種でいうと結構幅広く?
桐島:
ですね。ただやっぱり一番大きいのは制作会社ですね。なので広告関係です。それは意外だなと思っています。僕も正直、そこのマーケットはそれほど期待してなかったんですよ。あと中堅のゲーム会社とか、あとテレビの仕事は多いですね。大体全部来てますね。よくオープニングとかに使う3Dデータを制作しています。
意外とドキュメンタリーとかにつかう、昔の回想シーンみたいなのをCGで再現したりとか、そういうのとかはいろいろやってますね。
ーーじゃあ3Dで立ち上げるもの以外の周辺の部分も含めて制作されているんですか?
桐島:
背景とかもやっていますよ。あとは最近、遺跡とかそういう建物のVRを作ることが本当にやりたいところなんです。VRっていうのは、普通行けないような所に行けるようにしてあげることが大事だと思っているので。だからCADデータのような3Dの図面がない古い建物はスキャンしないと3Dデータができないんで。例えば有名なお寺で普通は中に入れないような所をスキャンさせてもらって、いろんな人が疑似的に体験できたら素敵なんじゃないかなと思って。そこら辺はすごくやりたいところですね。
やっぱりフォトグラメトリーの面白さっていうのは写実レベルのデータが作れるところですね。CGってどうしてもCGっぽさが残ったり、またゼロから作ったものは写実レベルに落とし込むのにすごい時間と労力がかかるんですけど、フォトグラメトリーってもともと写真なんで、テクスチャーが写真からできているのです。それが、少ないポリゴン数でも写実レベルの見栄えがするという一番の強みなんです。
ーー御社として今後伸ばしていこうとする領域はどういうところになるのでしょうか?
桐島:
3Dスキャンは一般の人もこれから行えるようになっていくと思うので、一般の人が求めているサービスプラットフォームを考えないといけないと思います。3Dスキャニングのサービスはプロ用のサービスを残します。どんなにオートメーションが進んで携帯の性能が良くなっても毛穴までスキャンできるってことは絶対ないんで。だから5年間は確実にハイクオリティな3Dスキャンのサービスは続行できると思うんですけど、これから3Dがマスに向かってったときに、サービスのプラットフォームが必要になってくるんじゃないかと思います。だからそういうところで勝負するしか生き残りはないなって思いますよね。
ーーそれはいろんな方が3Dモデルを撮影もできるし、扱えるという意味のプラットフォームですか?
桐島:
データは皆さん作るわけですから、それをどういうことに利用するかというニッチなところを見つけていかないといけないんじゃないですかね。やはりこれからそういうセグメント化してったサービスのほうが、需要があると思います。
フォトグラで、スキャンでうんぬんっていう3Dデータを作る方法論より、自分は3Dデータできたときにどういうふうに応用できるのアイデアで、いろいろできるんじゃないかなって。
ーーなるほど。では特に今後VRの中でというよりかは、そこの部分に注力していくということですね。
桐島:
もちろんVRにはすごく興味がありますが、ただやはり今だとゲームと不動産の分野での使い道ぐらいしか思い付かないじゃないですか。弊社はまさにその2つに今フォーカスしてますが、多分これからモニターとパソコンっていう概念もなくなってきて、ゴーグルとスマホだけになってくんじゃないのかなと思います。そうなったときに、やはりMRなりARなりVR、どこまで進化するかですよね。だからゴーグルが眼鏡くらいの大きさになったら非常に面白いんじゃないかなと思いますけど、同時にこの先10年間は正直無理だろうなと思っています。
スタンドアローンのVRヘッドセットは多分来年あたりに結構マス化するだろうけど、それが16Kに対応してなおかつ120フレームみたいなスピード感でVR酔いがしなくなるっていうところまで行き着くのは、最低でも5年間かかると思うんで。そこからですよね、VRが本当に面白くなるのは。そしてそれが軽量化して安くなって1万、2万で買えるようになったら、もう多分誰もパソコン持ち歩かなくなるだろうなと思っていて。だって目の前に大きなスクリーンがあったら別にいらないじゃないですか。だから「ヘッドマウント・ディスプレイをしてVR」とかっていう発想じゃなくなって常に眼鏡をして、透過モードなのかスクリーンモードなのかみたいな選んでやるっていうような時代もあるんじゃないのかなっていう。
ーーありがとうございます。今手掛けられている案件だと、撮影から納期の間の期間だとか規模感って、どれぐらいのイメージのものですか。
桐島:
本当にすごくピンキリなんですよ。うちは最低限一つのデータ化するのにコスト的に15万円ぐらいなんです。そして普通は3週間いただいてるんですけど、それはあくまでリタッチしてきれいな3Dデータを作るってところまでですね。それを動かせるようにするとか、髪の毛も作ってください、服も作ってください、しゃべれるようにしてくださいとかってなると、やはりら3カ月以上かかる場合もあります。
ーーできることの幅が広い分、コストや期間にも幅があるんですね。
桐島:
今はUnityとかUnrealEngineを使ったら、アイデアさえあればゲームなんて誰でも簡単に作れちゃう。すごい時代になったなと思います。だってうちみたいな小さな会社が3Dスキャンできちゃうわけですから。人は3Dスキャンできる、キャラクター作れるし、じゃあそれに使う背景もCGで作れちゃう。あとはアイデアだけじゃないですか。だから今までだったら億単位のコストで作らないといけない超ハイエンドのゲームを、その気になれば別に100万円ぐらいで作れちゃう。
いい時代だと思いますよ。いい時代だけど、逆にお金を稼ぐのは本当に難しい時代。それはまさにスマホのゲームもそうだけど、何が当たるか当たらないかって本当にそれ自体がくじ引きみたいなものになっちゃってて、どんなに頑張っていいもの作っても売れなかったりするし、逆にそうでもないゲームが若い子に受けて何億も稼げちゃうみたいな訳の分かんない時代になってる。だからクオリティーが必ずしもいいって時代じゃなくなってるのがありますよね。
ーーなるほど。今そういった意味で言うと、例えばクオリティーはそこまで高くなくていいけど取りあえず作ってよみたいな話も結構多かったりするんでしょうか?
桐島:
結局、3Dモデルの落としどころがほとんどスマホなんですよ。スキャンした段階ではめちゃくちゃクオリティー高いんですよね。それをかなり縮小して、昔の携帯で撮った写真ぐらいのクオリティーに落とさないといけないんですよ。それはもったいないじゃないですか。だからそれと同じ問題ですよ。
ーーありがとうございます。最後にお聞きしたいのですが、VRというところにフォーカスしていったときに、今後どんな展開があると思われますか?
桐島:
オリンピックもあるのでスポーツ関係はすごく盛り上がると思いますね。日本だとこれからスポーツ周りはすごくいいです。例えば前回のオリンピックだとプロジェクションマッピングがあったりとか。プロジェクションマッピングも、ある意味もうみんな慣れちゃってるし。いまさらそれがキラーコンテンツってのはないと思うんで、多分VR、ARが2020のキラーコンテンツになるのは確実だと思います。
それから医療とかもこれから伸びしろがありますよね。やはり医療関係の、体のスキャニングしてその人のMRIとCTスキャンも組み合わせる。歯の矯正前、矯正後のスキャニングみたいのこともやっていて、それもすごくいいですよ。だから医療はこれから伸びると思います。ただ一般の人が矯正する前に一度3Dスキャンしたら矯正後が見ることができるようになれば。あと整形とかですよね。美容整形でメス入れる前に、あなたの顔はこうなりますみたいな。それが立体的に見えるとやっぱ安心じゃないですか。そうなると、ビッグデータが必要だから、これからそういうスキャンの話はいっぱい来ると思います。
ーー確かにデモンストレーションできるのは大きいですね。
桐島:
あとはもちろん旅行ですよね。ツーリズムは絶対伸びると思います。だからうちも今、金閣寺やりたいなと思ってて、金閣寺のスキャンさせてくださいってお願いしてるんですけど、まだOKが出ていません。金閣寺の中に普通入れないんで、それをじゃあVRで体験させてあげるとか、そういう日本の重要文化財、全部スキャンしたいな。お城とかは何個かやってるんですけど、やはりそういう世界的なアイコンを3D化、姫路城とかもそうですけど、外だけじゃなくて中にも入れるっていうのはやりたいなと思って。ツーリズム、医療、あとスポーツですね。VRが一番伸びるのはその三つだと思います。
ー桐島様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー
株式会社AVATTA
〒105-0011 東京都港区芝公園2-11-20
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