【STORY × ビービーメディア】「30人同時にVR体験ができたイベントの背景とは」

筆者: 編集部

ビービーメディア株式会社は、1999年2月に設立し、以来TVCM、ウェブサイトを中心にコーポレートブランドから個別ブランドまで良質な映像ブランドコンテンツづくりを行ってきました。今回はその中でも森永製菓へ提供した「キョロちゃんのバーチャル工場見学」VRコンテンツや、今後のVRの展開についてなどを、ビービーメディア株式会社田村雅幸様、楊暁東様、中野兼太郎様にお伺いしてきました。

ーー御社はどのような領域でVRを手がけられていますか?

ビービーメディア田村様(以下田村):
私たちはテクノロジープラニング部門という、技術と企画に特化した部門に在籍しているんですが、おそらく世間からも注目されており、いわゆるテクノロジーと映像とを融合させられるVRの研究をしておりました。そんな中、クライアント先の森永製菓さんから4年に1度行われる菓子博というイベントにコンテンツとしてVRを用いたいとお声がけいただいて、今回開発をしたという流れです。

ーータイミングとしては研究されている時に案件発生があったということでしょうか?

田村:
そうですね。ちょうど研究していたところもあって、あとはお客様にもある程度研究したものは出していって。弊社に研究するためのラボというものがありまして、そこで結構普段から新しい技術みたいなものは研究していて。それである程度たまったらお客様を招待して見ていただいて。マッチングしたら仕事として先に進めていくという感じですね。

ーー研究というのはどういったことを行われていますか?

田村:
主にVRでどうやって見れるんだろうとか、どれくらいのことができるできないとか。お客様に提案するときも、できるできないの線引きができていない提案をするわけにはいかないので、ある程度自分たちの中でこれだったらできるねというのを研究していて。例えば今回のイベントでGearVRを使った際に、フルCGの4Dで作ったような動画もどこまでCGが綺麗に見えるのかを事前の研究で突き止めていたので、お客さんに見てもらったときでも、ここまでは綺麗に見せられるけど、これ以上は厳しいといったことはわかりました。

ーー御社は技術的なところやデバイスを含めてVRのどこに注力されるおつもりでしょうか?

ビービーメディア楊様(以下楊):
デバイスでいうと、現状試した段階でGearVRが一番使いやすくて解像度とかは一番良いと思います。ムービーの操作とかは他のと比べると今後、VRをやろうとするとGearVRを選択、優先されていきますね。

田村:
基本的には広告で使っていただく形にはなっています。今回の「キョロちゃんのバーチャル工場見学」においても、菓子博というイベントで使用いただいたときに、ブースには1日に1000人VR体験がしたいという方がお越しになって。GearVRを使ったプリレンダリングのCGアニメーションを今回作りまして、1日1000人というノルマをこなすために、中野が同時再生プログラムを開発して、一度に30台同時再生を可能にしました。

ーー別個のGearVRのコンテンツを同時に再生したのですか?

田村:
そうです。私たちもずっとブースに張り付いているわけにはいかないので、事前に使い方だけ説明して、あとはコンパニオンの女性の人たちが1日1000人こなすみたいなことで。パソコンでわかりやすく、ポチッとコンパニオンの子が起動すると全部連動して動くという感じです。結局のべ25日間で2万5千人にVR体験をしていただきました。

ーーすごいですね!そのときのお客様の反響はいかがでしたか?

田村:
もうすごかったですね。子供用にハコスコを用意して体験できるようにしていたんですが、子供たちもすごく喜んでくれました。


(菓子博の様子)

ーーやはり大人数向けの企画を提案されることが多いんでしょうか?

田村:
そうですね。やはり目的は広告なので、一人だと単価がいくらかかってるのと言う話になりがちで。今回のコンテンツに関しては、菓子博があって2万5千人が体験した後も、お客様に機材も買ってもらったり、イベントで二次利用、三次利用して最終的には工場見学の方に増設していくと言うことを狙っていました。要はやればやるほど一人当たりの単価が下がってくるという形ですね。VRはどうしても高いというのと、一人当たりのコストがいくらかかるんだという話が出てくるものなので、提案するときも、一回きりじゃなくて次こういうことに使えますよという提案の仕方を考えながらセットで提案していますね。

ーー同時に30人が体験できるシステムを開発したとき、どういうところが一番大変でしたか?

ビービーメディア中野様(以下中野):
開発もそうですが、物理的に数が多いので準備段階から一人で全部の確認をやらなきゃいけないことが大変でしたね。

ーー同時に動作させることは海外の事例などを参考にしたんですか?

中野:
4台で動くVRチェアとか最近あると思うんですけど、同時に10-30台というのはあまりないですね。技術的なところも調べてもなかなか出てこないので、独自で制作しました。

ーー御社の中ではそれを一つのパッケージとして、他にもコンテンツを差し替えて使うことは想定されていますか?

中野:
もしVRを今後提案するとしたらGearVRで、同時に複数体験できるという構想はあります。

田村:
私たちは部門ブログを書いているんですが、そこで情報は開示しています。自分たちだけじゃなくて、何か困ったことがあればそれを見てもらって参考になればいいし、逆にこっちもそれでVR業界が盛り上がればいいかなというのがあって、あえてなるべくオープンに。

ーーなるほど、業界全体のためにあえてオープンにされてらっしゃるんですね。今後VRはどういう使い方がされると思いますか?

楊:
やっぱりCGと実写両方で使っていく手がこれから増えてきそうだなという感じがしますね。今はフルCGで使って、それと実写は実写で使って、両方を混ぜている作品はなかなか少ないですよね。なのでうまくいけばこれから実写合成の作品はどんどん増えていくんじゃないかと思います。あとVRゴーグルをかけるのは手間がかかるので、もっと小さくて軽いものになるとユーザーがもっと増えると思います。

田村:
VRでイベントをやるとやっぱり女性が抵抗あるみたいです。いくらニンジャマスクがあるとはいえ、女性はどうしてもファンデーションの問題があるので。すぐ結構イベントでも途中で外しちゃって。楊が言ったように、ヘッドマウントディスプレイだと女性的にはどうかなというのもあって。グラスみたいなもので、直接肌が触れないで見れる物がどんどん触えてくると、女性も抵抗なくVR見てもらえるのかなっていう気はしましたね。

ーー2、3年くらい前に3Dテレビが生まれて専用のメガネなく見れたように、VRもそんな風になっていくのでしょうか?

楊:
ちょうどそういうことを考えていて、小さい両目の視野を一点に中心に合わせていくと、なんとなく立体感が生まれてくるんですよ。そうすると目にすごく負担をかけますし、そこはちょっと違うなみたいな。今の使ってるゴーグルがレンズを使って、立体感を感じるっていうのは、脳の錯覚なので目に負担はありませんが、極端に裸眼にこだわるとそこはちょっと違う方法になっちゃうというか。

ーー森永製菓さんのチョコボールのVRコンテンツについて、制作期間はどれくらいだったのでしょうか?

田村:
トータルで5ヶ月くらいですかね。企画から始まり、実際工場へ行って実写で撮影しています。ファンタジーの世界であっても工程はちゃんと守っています。

中野:
機材を準備するのだけでも大変だったので外部のCG会社の方と協力して一緒にやりました。

ーー今回のプロジェクトは国内外でも注目されていますが、その成功の要因は何でしょうか?

田村:
今回はイベント会社の力が大きかったですね。イベント会社がVRのことよく勉強してくれた上で運営をやってくれていたので、非常にスムーズに進行させることができました。

GearVRを30台なので、同時に再起動して立ち上げるとwi-fiがパンクして、何度も何度も強制的に再起動するようになったことがありまして、結局中野がwi-fiを初期化して、一から繋いでいったら何とかなったので、イベント会社の方にもイベント終わるまで電源落とさないでくださいって。イベント会社さんもいろいろ考えてケーブルとか探し出してくれて、常に充電できるようにしてくれたりして。

楊:
それからクライアントもコンテンツ内に登場するキャラクターへのこだわりはやはり強いものがあったので、くちばしの角度はもっとこうしてほしいとか、目の大きさとか、何度もやりとりして「キョロちゃん」を3D化させていきました。

ーー実際にクライアントとのやりとりの中で、もっとこうなれば良いのにと思った点などはありますか?

田村:
360度の空間って後ろ見たときにどうなってるのとか共有することがすごく難しいじゃないですか。そういうことを共有するときに、3D空間内に浮かんでデモというか、一緒に見ていったほうが間違いは無いなと思います。今回もイメージボードはイラストでしたが、コンテンツにしたときにどうしても対のコンテなんですよ。本来であったら3D空間の中で一緒に見れて、そこで意思疎通ができればスムーズにやり取りができるかなと。

ーーなるほど、ありがとうございます。それでは最後に、今後御社の中でVRってどんな展開をされていくかイメージがあれば教えていただけますか?

田村:
まずはフルCG的なものをウリというか、強みというところに持っていきたいですね。それ以外でも、実写やインタラクティブもそうですし、VR系についてはどこということもなく、とにかくなんでもチャレンジはしていきたいなと思います。ただ基本的には弊社テレビのCMをもともと作っている会社なので、映像と絡んでいるものをやっぱりやっていくのが強みかなと。やっぱり映像っていうバックボーンの中でやっていったほうがビジネスとしてはいいでしょうし、受けるお客さんも安心してお仕事を任せていただけるのかなという気はしていますね。

ー田村様、楊様、中野様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー

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