VR広告が、VR市場の成長の鍵を握っている

筆者:手島 理志

スマートフォンを代替すると評されるVRという技術に、多くの人は胸を躍らせています。しかし、その流行の反面、「VRはいつ本格的に流行るのか」 という疑問を持っている人が多いのも事実でしょう。
2020年には1兆円以上の規模になると予測されているVR市場ですが、果たしてその通りに成長していくのでしょうか。また、VR市場が大きく成長していくためにクリアしなければいけない課題とはなんなのでしょうか。今回はVR市場の課題点、そして解決法についてを広告という切り口から考えてみたいと思います。

VR市場の現状

 
VR市場は日々成長を続けており、エンターテインメントとしてゲームやアトラクションに活用されるだけでなく、教育や医療など、ビジネスシーンに利用される例も増えています。
 
国内外数多くの調査会社がVR市場の今後の成長を予想しており、アメリカの調査会社IDCは2020年にはVR/AR市場は1620億ドル(約1兆8千億円)市場になると予測しています。
 
その反面、VRに関する認知度にはまだ課題の残る数字が出ています。MMD総研調査の認知度・利用実態の調査によると、認知度は45.4%となっているのに対してHMD・VRゴーグルを実際に購入するまで至った割合は3.7%と非常に低い数字になっています。このように高まっていく認知度に対して、実際に購入に踏み切る人は非常に少ないことがわかります。
 

【参考記事】
【統計・市場調査まとめ】VRの市場規模
【統計・市場調査まとめ】VRの認知度・利用実態

 

VR市場が抱えている課題

 
徐々に認知はされつつあるVRですが、実際にHMD・VRゴーグルを購入している一般ユーザーはまだまだ少なく、大衆化に向けてはまだ課題が残る現状となっています。では、この状況を打破するためには何が必要なのでしょうか。
 

コンテンツとハードのジレンマ

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その1つの原因としてハードウェアの価格・性能の問題があります。市販されている高性能なHMDの価格帯は、一般消費者には手が届きづらく、かといって安価なVRゴーグルでは体験として少し物足りない状況です。
 
しかしそれ以上に鍵を握ってくるのは、キラーコンテンツの存在の有無だと考えられます。かつてのスマートフォンが、ソーシャルゲームやソーシャルコミュニケーションアプリの登場とともに普及率を格段に上げたように、VRにも「このコンテンツを体験したいから、ハードを購入する」という消費者心理をいかに作り出すかが今後の争点だと言えます。
 
一方で現実は、ハードの普及率がまだ低い中ではVRのコンテンツデベロッパーが市場に参入しにくい状況なのも事実でしょう。
ハードはコンテンツがなければ普及しない。コンテンツはハードが普及していなければ作られない。このコンテンツとハードのジレンマを解消するために何をすべきかという問いが、今最も重要なものかもしれません。

 

VR広告はジレンマを解消するのか

キラーコンテンツを生み出すための方法を考えるということは、デベロッパーの競争環境がどうあるべきかを考えるということと近しくあります。これはVRに限ったことではありませんが、競技人口の多いスポーツの方がプレイヤーの水準も高まるように、質は数なくして上がり得ません。言い換えるなら、VRコンテンツデベロッパーの市場への参加障壁を下げ、いかに競争率を高めていくかを考える必要があるということです。
 
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その点から注目したいのがVR広告です。VR広告とは、その名の通りVR空間上にディスプレイされる広告フォーマットを指しますが、このVR広告をうまくデベロッパーに活用させることが重要だと考えられています。
これまでコンテンツを売り出し買ってもらうという画一的なマネタイズモデルの中でビジネスを成立させる必要がありましたが、VR広告をうまく活用すれば収益を上げる方法を広げることができます。

 
開発したコンテンツをユーザーに体験してもらわなければいけないという点では、VR広告がデベロッパーの収入を格段に引き上げることはありませんが、この収入導線を引くことで、無料コンテンツとしてユーザーに見せることも可能になり、ビジネスの幅は確実に広がることでしょう。
 
そうしてデベロッパーの競争環境が生まれ、高価なハードを買ってでも体験したいコンテンツが生まれた時、コンテンツとハードのジレンマは正のスパイラルへと姿を変えるのではないでしょうか。
 

VR広告の可能性

 
さらにVR広告についてもう少し補足していきたいと思います。VR広告とはどんなものか、また実際にどのように活用されているのかを説明します。
 

VR広告ならではの価値

VR広告は、これまでのデジタル広告とは異なる点がいくつかあります。1つに取れるデータの緻密さです。これは今後の可能性も含めた話になりますが、VR空間では人の視線までもトラッキングすることが可能で、これまで集計することのできなかったユーザーのインサイトを定量化できる可能性を秘めています。
 
もう一つは、広告としての自然さです。VR広告のフォーマットはGoogleを中心に最適な形は今模索されている最中なのですが、ディスプレイの方法にも圧倒的な自由度を持たせることが可能です。例えば、空間内にあるTVからCMが流れたり、見ていたオブジェクトの表面をブランド広告に変化にさせたりと、今までの「広告疲れ」を招くような一方的な広告ではなく、ユーザーの体験に溶け込む超ネイティブな広告”体験”としてユーザーに届けることが可能です。
 

VR広告のプラットフォーム

次に実際にあるVR広告のプラットフォームを紹介します。
 
【VRize Ad】

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VRize Ad」はVR内動画広告ネットワークとして運用されており、VRコンテンツ内で動画広告を配信しています。見せ方としては大きく3つに分かれています。1つは360度動画を使った広告。もう1つはVR空間に巨大なスクリーンを設置し、そのスクリーン上を使ったテレビCM風の広告。そして最後はVR空間上でCGのオブジェクトを動かして表示するものです。
 
【Immersv】

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Immersv」社は、360度動画とVR動画広告エンジンにおいて、世界でも有数な広告プラットフォーマーです。「Immersv」を動画リワード広告の配信ネットワークとして活用することで、360度動画広告をアプリ内で配信することが可能です。
 

まとめ

 
期待が寄せられるVR市場ですが、こういった新興市場においてはハード、ソフトに限らず様々なプレイヤーが相互に依存しあって市場を発展させていくことが重要です。何をトリガーにしてVR市場が急速な拡大を迎えるのかは蓋を開けてみなければわかりませんが、この記事でも述べたようにコンテンツデベロッパーにとって、VR広告を活用したビジネスの展開は今後必要な動きになってくるかもしれません。

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